イルカ、恋うた
夜まで、手が空かなかったので、翌朝出勤前にかけてみた。


出たのは、義父だった。


「なかなか連絡できなくてごめんなさい」


『刑事は忙しいだろう。気にするな』


義母も交えて、近況や世間話をした。


その合間に、義父が言った。


『親父さんのお墓にまだ、参っていないだろう。住所をメールするから、今度休みをもらったら行くといい』


優しい声に、泣きそうになる。


ぎこちない点もあったが、確かに愛のあった家族だった。


「ありがとう、おじさん。本当にどう感謝していいのか、わからない。本当にありがとうございます」


『他人行儀はやめてくれ。お前は私にとっても息子なんだから。じゃあ、身体に気をつけて』


電話を切ってしばらくして、メールが受信された。


行ったことのない、父の実家。


メールを読みながら、感慨に浸ってた。


すると、また携帯が鳴る。


今度は美月だった。


うわぁ、余計泣くかも、なんて思いながら、一息吐いてから、電話に出た。


『おはよう。出勤かな?』


「いや、先輩に夜食の買い物頼まれてる。スーパーかコンビニに寄ってから行く、って言ってあるから、多少遅れても大丈夫。何かあった?」


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