イルカ、恋うた
『ううん。声が聞きたくなったの。今日はどこにも出ないから、竜介に会えないし……。なんかね、友達にも会えないって、つまんないね』


「そっか。制限されてるもんな」


『でもね。いいの。私の婚約破棄知らせてないし、会いづらい…あのね、竜介……』


美月はそこで黙る。


「美月?」


『……いつか、恋人として……友達に紹介しあえる時って来るのかな』


それは俺にも分からない。


「来たらいいのにな。父さんにも会わせたい。おじさんにお墓の住所聞いたんだ」


反応がちょっと怖かったけど、彼女は「どこ?」と訊いてくれた。


「広島。でも、田舎の方。島根が近いかな」


美月は嬉しそうに、「本当?」と言う。


「え、うん。なんで?」


『あのね、白イルカがみたいの』


聞いたことはあった。

幸せになれると言われる、バブルリングなるものを、そのイルカが吐き出すらしい。


「じゃあ、全て終わったら、父さんのとこに行って、その水族館に行こう」


美月は「うん」と笑う。


だけど、すぐに不安げに言う。


『約束だよ。この事件が解決したら……』


「うん。約束する」


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