イルカ、恋うた
《7》

父と娘

最近の木田は、本物の調書にこだわっていた。


最近、小さなことでもメールをしてくる。


やはり、調書という文字は出てくる。


そんなものが存在するなら、捜査自体必要なくなる。


その本物の調書を読めばいいんだから。


だから、今の捜査は結局、調書探しになる。


木田の気持ちも分かる。


しかし、持っていたのが、佐伯検事正だろうが、捜査担当の検事だろうが、検察庁そのものだろうが、とっくに処分してるはずだ。


それでも、木田は捜査検事を捜しているらしい。


『当時の捜査検事が誰なのか、現在どこの地検にいるのか、引退して弁護士にでもなっているのか、未だ不明。

たとえ、発見できても、口は割らないだろうな。佐伯氏が東京地検の検事正なら、そいつもそれなりの地位を獲得しているのかもしれない。

やはり、佐伯検事正しか糸口はないと思う。わずかな可能性だけど、調書を保管しているのでは、と考えてしまう。

これ以上、調査が無理なら、なんとかそれを手に入れたい……。』


それは自分も伊藤弁護士も同じだ。


検察庁の帳簿に残されるのは、確か裁判記録と公判に使用された種類、調書。

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