イルカ、恋うた
「嘘!!知ってることでいいの。教えて!この間、パパと二人で話をしたのは、関係あるんでしょ!?」


彼女は俺の腕を掴んで、揺する。


「本当に何も分からないんだ。でも、一つだけ分かる。彼は、若い子達で、懐を温めてた奴らを許せなかったんだ。君のお父さんは、そいつを倒して、その子達を助けたんだ」


間違ったやり方だと、彼を責めたのに……


矛盾してる。


だけど、子どもが親を嫌うほど、辛い話はないから…


彼が子ども達の将来を、誰よりも案じていたことも事実だから。


「お父さんが正義感が強くて、優しい人だって、君が一番誰よりも分かっているだろ」


「うん」


頬を手で拭う彼女を、横から抱きしめる。


美月はこちらを向きあって、背中に手を回す。


彼女の頭を撫でながら、初めて対面した時の、佐伯検事正の言葉を反芻してみた。


あの時は、やたら緊張してて、さらに恐怖心まであったから、うろ覚えの部分もある。


『一番の要因である、暴力組織は逃げのびるばかり。

被害者ばかり捕まえても、本体をどうにかしなければ、蔓延するだけ。

悪魔を許さん。子ども達を、若者を潰す輩が一番の悪魔』

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