イルカ、恋うた
卒業試験前なので、義父と義母は気にして、落ち着くまでは、と黙っていたらしい。


彼の遺骨は故郷で、両親と同じ墓に入ったそうだ。


俺は参れなかった。


スケジュールのこともあるけど、勇気がなかった。


寮の部屋で、引き取った荷物を整理していた。


父とツーショットの写真を一枚、写真立てに入れた。


涙は出ない。


それから、一枚の絵が出てきた。


イルカがリボンを頭に乗せ、泳いでいる。


女の子が、『私は死ぬ。でもその時は美月の傍に宿る時だって』と、母親の言葉を教えてくれた。


それを思い出して、涙腺が緩んだ。


父さん、僕の傍にいますか?


写真立ての彼に、尋ねた。
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