イルカ、恋うた
伊藤弁護士は、野村巡査の横たわっていた地に花を置いた。


それから、小さくため息を吐いた。


「そうですか、彼はせんなことを……」


「ええ、また別の話が聞けると」


そして、彼は手を合わせた後、ゆっくりと立ち上がり、こちらを向いた。


「私は八百長をしたんです」


――え!?


意外なセリフに、愕然とした。


「……といっても、そんな難しいことをしたんじゃないですがね。始めはそんなことは考えていなかった。

現に、接見禁止は違法だと、裁判所に訴えました。その時、既に数回短時間でしたが、一応はあったんです。

捜査の必要性とともに指摘され、棄却されました。警察は二十四時間も活用していました。

そんな時を惜しがるほど、どんな捜査をしているのか、本当にしているのか、疑問を抱きました。何か策略がある気がして」

そして、彼の中で疑問点が出てきた。


「凶器の発見も、正直不自然です。こんなにタイミングがいいものだろうか。実は、独自の聞き込みで、御崎でアパート近くで、スーツを着た男、まあ刑事でしょう。目撃されてました」


「……それで?」と思わず、訊いた。


「私は黙ってました」

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