イルカ、恋うた
――翌日


木田はルポとして公開するのを、佐伯検事正襲撃の犯人逮捕を待ってからとした。


彼とは久しぶりに、あの喫茶店で会った。


気まずくなることもなく、始めは事件には触れず、学生時代の思い出と卒業後の疎遠の間の出来事を話してた。


「お前、腕相撲やけに強かったもんな。柔道では苦労しなかったろ」


「関係ないよ。技が必要なんだから。でもさ、武道をかじってた奴が、続けたくて、警察学校に入ったって聞いた時は驚いたよ」


「竜介、ありがとう」と、彼は唐突に礼を言った。


しかも、片手を差し出した。


「木田?」


「真実に辿り着いたのは、お前のお陰だからな」


「俺は何もしてない。ほとんど、お前の力だよ」


また、彼は唐突に言う。


「いつかの悪態悪かったな。ちょっと、突っ走りすぎた」


「俺も言い過ぎたよ。ごめん。お互い様だろ」


と、自分も謝ると、彼は急にニヤリと笑う。


「な、何だよ?」


「お前、本当に彼女を守りたかったんだな。いいなぁ、俺も女をそこまで愛してみたいよ」


「ばーか……じゃあ、頑張れよ。ルポ楽しみにしてるよ」


俺は彼の肩を小突いた。


彼らは初日のように、店で別れた。


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