イルカ、恋うた
走りだそうとした彼女の腕を、俺は捕まえる。


「離してよッ。どうでもいいんでしょ!?ほっておいてよ!!」


「美月!いい加減にしろ!!」


ビクッと、彼女は大人しくなる。


「……あなたを守るのが仕事なんです。岩居刑事だけじゃなく、他の人にも迷惑がかかるんで、お願いですから、大人しくしててもらえますか?」


――ごめん。ごめん。でも、これしか思いつかないんだ。


佐伯宅まで、後ろから嗚咽が聞こえてた。


だけど、俺は無言で運転してた。


彼女は車から降りると、門の中まで駆けていった。


――胸が苦しい。


でも、これで彼女は留学を決心してくれるだろう。


――君さえ、無事でいてくれたら。


夢を叶えて、幸せになってくれたら、俺は君のいない不幸にも、耐えるから。


さようなら―…




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