イルカ、恋うた

思慕と希望

伊藤弁護士の口から、彼女の出発日は、三日後だと聞いた。


留学の話をした後、すぐに発てるよう、佐伯氏は部下に頼んで、すでに用意をしていたらしい。


向こうの家族も、佐伯氏の事件を知り、快く引き受けてくれたのだという。

あとは、彼女本人が準備を終えるだけ。

その美月はついに、覚悟を決めたそうだ。


覚悟を決められないのは、情けないことに、俺だった。


でも、喜んで見送りたいと思いに嘘はない。


互いの決意が緩まないよう、もう会わないと決めていたから、せめて、餞別を用意しておいた。



そして、出発の前日。


署に帰ると、空気が殺伐としていた。


どうやら、何者かが取り調べを受けているようだ。


その空気から、重罪でも犯した人間だろうと推測した。


「今は逮捕したウチの刑事が担当しているが、特捜班に引き渡しになるかもしれない」


と、課長が言った。


「なぜですか?」


「はじめは、ただの暴行の現行犯だったんだが、ズボンの腰に銃を隠していたんだ。それがなんとマグナムだ。今、鑑識にまわしてる。大方、一致するだろう」


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