イルカ、恋うた
『竜介へ

改めて、手紙を書くとなんだか照れくさいです。

公園ではごめんなさい。私のこと考えて言ってくれていたのに……。

わがままだったよね。私ね、たまに竜介の気持ちが分からなくなるの。

ペンダントを歌の代わりだとくれたり、キスもするのに、遠い距離を感じる時がありました。

それは竜介が、パパやお兄ちゃんを気にしているんだとも考えたけど、なんていうか……寂しかった……。

私はね、勝手かもしれないけど、周囲とか関係なかった。とにかく、竜介の本心が知りたかった。竜介が、あなたの気持ちが欲しかった。

だけど、ずっと傍にいてくれるって言ったことも、お父さんや白イルカに会いにいく約束も、本気でしてくれたんだよね?

本当に嬉しかった。
ありがとう。
私、ちゃんとイギリスに行きます。最後に言わせてください。

イルカの前で、少女が伝え損ねた言葉を……』


ここで、一旦目を離して、目を閉じた。


あの頃の水族館の風景と、イルカの前で知り合った女の子を、瞼をスクリーンに思い浮かべる。

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