イルカ、恋うた

波紋

なんとか嗚咽を治まり、余韻に浸るように、ただ動けなかった。


しかし、携帯が鳴る。


表示を唖然と見ると、課長だった。


また、何かの説教かなぁ、と憂鬱になる。


上司を無視するわけにはいけないので、電話に出た。


怒鳴られるのかと思えば、やたら小声で話す。


『岩居知らないか?』


「え?いえ、なぜですか?」


――あれ?美月を送りに行ったんじゃなかったのか?


『電話に出なくて。先日逮捕した、マグナム所持の男の経歴書を、さっき改めて読んでたんだよ。

そしたら、途端に出て行ったんだ。どうやら、親が経営している不動産屋の名前が、知っているものだったらしいが……』


課長の背後が、ざわついている。


本庁の人間もいるみたいだ。


『お前じゃないから、勝手に調べたり、変な行動しないと思うんだけどね』


ああ、その節はすみませんでしたね…


とりあえず、連絡があったら、課長が探していると、彼に伝えるということで、電話を切った。


それから、まもなく携帯が鳴り、今度は岩居の名が表示された。


課長のことを伝えるはずだったのが、彼は一方的に叫ぶように、話しだす。


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