イルカ、恋うた
『御崎弟自身も、兄の事件で女に別れを切り出されたみたいだ。お嬢さんにたいしては、妬みだな。それで、復讐を思いついた、と』


「ちょ、ちょっと待ってください。その日記は逮捕された男のじゃないんですね?」


『ああ、その弟の目線で書いてある。確実に、この部屋の住民は、逮捕された方じゃなくて、まだ野放し状態の……御崎の弟だ……』


「じゃあ、早く本庁に報告して……」


『そんな余裕ない。マグナムは確かに、一本のみ。だけど、それは車を狙うため。別にコイツは、まだ拳銃を持ってる。そいつが野放しで、彼女の留学を知っているんだ』


つまり、今一番危険なのは……


『検事正の特別室にはさすがに侵入できない。だったら、兄がそうだったように、大切なもんを奪ってやると。それが最後のページだ』


俺はとっさに、携帯を切り、同時に走って、公園を出た。


ずっと、切ってしまっていた携帯が鳴っていたが、出られたのは、タクシーをなんとか捕まえて、乗り込んだ後。


岩居さんは運転中らしい。


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