イルカ、恋うた
『竜介。今朝、お嬢さんを迎えに行くって言ったら、桜井検事が話したいから代わってくれ、って言って……。
桜井検事の携帯、ずっと話し中なんだ。こんなことなら、俺も行けばよかった……お前も急げ!』


そして、また携帯をこちら側から切った。


「急いでください!」と、困惑する運転手に叫ぶように頼んだ。


俺も後悔していた。


こんなことになるなら、最後まで離れるんじゃなかった―…


握り拳を置いた膝を、まるで貧乏揺すりのように、震わせていた。


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