イルカ、恋うた
美月は嗚咽を抑えながら、包みを見つめ、ゆっくりと開けた。


二頭のイルカが並び、輪舞している。


それは、切れ目も目立たないほど、額縁に綺麗に入れられている。


次、再会したら、一つに戻すの。恋人同士が帰るのよ。きっと、その時は……


彼女はイルカを抱き締めた。


しばらくして、今度は白衣を着た男性が現れた。


「水島君に会うかい?」


「え?」


「……君が絶対安静だったから、昨日は何も説明せずに、寝かしつけてしまったけどね。彼は別の部屋にいるよ」


この時、考えてしまったのは、安置所だった。


先生は気を遣って、遠回しな言い方をしているんだ、と。


だけど、二頭のイルカが何かを伝えようとしている気がした。


「竜介は?」


「ICUにいる。君のお父さんと同じ……」


安堵していいのか、泣いていいのか、複雑な気持ちだった。


父は戻れるけど、精神的なものから、意識が戻ってこられないんじゃないか、と言われていた。


あくまで、ICUを抜けた後だったが。


「絶対、大丈夫ですよね?パパは助かったんだもん」

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