イルカ、恋うた
――やっと、みんなで暮らせるんだ!


あれ?と思い、ふと立ち止まった。


二人とも笑っていない。むしろ、辛そうな顔してる。


「なんで?嬉しくないの?」


二人は答えない。


「なんで?やっと、あえたのに……」


ここで、ある言葉を思いだした。


“やっと会えた”


こんなセリフ、前にも聞いた。

言ったんだっけ?言われたんだっけ?


不意に、ピィーピィー、と何かの鳴き声がした。


何かのシルエットが、横を通り抜けた。


「くじら?さめ?」


違う。ずっとずっと小さくて、ずっとずっと優しい顔している。


「イルカ……」


竜介、と目の前で止まったイルカが言った。


――わぁ、すげ。俺のこと知ってんの?


しかも、女の子……


「誰かに似てる?……あれ、俺、何歳だっけ?」


光が急に消えた。


「え?……やだ。行っちゃやだ!父さん、母さん!!」


誰かが言う。


一人じゃない、傍にいる。


だけど、お前も誰かの傍にいなきゃいけない。


それから、もう一人。
女性の声。


知らないのに、母ではないと思った。


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