イルカ、恋うた
私は彼女の傍に宿った。だけど、大切にしたいって思えるような、誰かに会えた時まで……だから、お願い……


それも、どこかで聞いた。


誰に聞いたんだっけ?


そのうち、声もイルカも光も消えた。


『竜介』


少女の声だけが、響く。その後、またイルカの声がする。


すると、少年は涙を流した。


――俺は、水島竜介 二十五歳


大きくなった手の平を見つめる。


「美月……」


その名を呼んだ途端、今度は背後が光り、それに包まれた。




「み……づき……」


「え?」


祈るように、閉じていた目を、彼女は開いた。


そこには、同じく目を開け、こちらを見ている彼がいた。


「何……祈ってた?」


かすれぎみの声で、竜介は問う。


「い、イルカ……に、連れて帰って……って」


泣きながら、膝の上に置いてた、イルカの絵を掲げた。


一つに戻すの。恋人同士が帰るのよ。きっと、その時は……


「私達も愛で結ばれる……」


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