イルカ、恋うた
イルカ達の詩
――半年後


墓前で、美月は手を合わす。


こみあげてくる想いに、目頭が熱くなり、胸も苦しくなった。



あの事件の後、木田が『闇の司法取引と作られた冤罪』と帯に書かれた、書籍を出版。


それにより、過去の捏造事件が公になり、すでに退職していた当時の関係者も、改めて表に出る羽目になる。


御崎は国家賠償請求をしなかった。


代わりに弟と数分、対面させてもらい、叱り続けたらしい。


真犯人だった少年の父親は改めて、野村夫人を訪ね、謝罪したという。


彼女は、土下座する彼を責めることはもちろん、少年に対しても、悪く言うことはしなかった。


佐伯は検事を辞め、法曹界から引退した。


桜井と伊藤は仕事を続けている。


ただし、二度と過ちは繰り返さないと誓った。


そして、彼女は再び旅立ちの日を迎えた。


その前に、彼のお墓を参りたかったのだ。


最後に、挨拶とお礼を――と。


線香の香りに、少しだけ落ち着き、美月はゆっくり立ち上がった。


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