イルカ、恋うた
――ママのことを考えてたせいか、パパの涙を見てしまったせいか…


それだけ?


「会えなかったからかなぁ」


と、思わず漏らした。


美月の意味の分からない答えに、首を傾げながらも、引率の教師に呼ばれ、彼女は去った。


――会えるわけないか…


ある少年を思い浮かべながら、美月も父親に呼ばれ、その場を後にした。


――その数時間後


「なんで、男ばかりで、水族館なんだよ!」


「しょうがないじゃん。女子が捕まらなかったんだから」


中、高学生くらいの、四、五人のグループが、その水槽前を歩く。


「イルカなら、ショーで見ようぜ」


「そうだな」


と語る中で、一人だけ立ち止まる少年がいた。


何かを思い出すかのように、水槽に寄っていった。


――変わらないな…


彼は一人、水槽に手を置いた。


数時間前に、彼女がいた場所だ。


「おーい、水島!早く、来いよ!!」


「ああ、今行く!」


彼もまた、立ち去る。


イルカ達は見ていた。


もう少し、もう少し―…


いつか、必ず―…




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