イルカ、恋うた
「いいか、言われたこと以外はするなよ」
と、しつこいくらい念を押す。
俺は岩居から、その女性の写真と、紙を渡された。
確かに美人だった。
瞳はくっきり二重で、まつ毛も長い。
カメラ目線の、うるんだ感じは、可愛いらしい上に、優しい印象を与える。
唇もふっくらしてる、ピンク色。
隣の父親と腕を組み、寄り添う姿は、親しみを覚える。
紙には、彼女の身の上が、簡単に書かれていた。
『佐伯検事正の長女。兄弟姉妹なし。母は、癌で数年前に他界。
歳は、二十四歳』
「一コ下くらいか……」
―え?
心臓の音が、岩居に聞こえたんじゃないかと、不安になった。
それくらい、胸が鳴った。
名前 佐伯 美月。
美月?
この名前は―…
イルカの水槽に吸いついていた少年と、唐突に声をかけてきた少女を思い浮かべた。
まさかな…。こんな偶然。
呆然とする俺の肩を、岩居さんが叩く。
「おい。ぼーっとするな。これから、本物を迎えに行くんだ。手を出すなよ。婚約者も一緒らしいからな」
その痛みは、肩ではなく、胸に響いた。
あの少女と決まったわけでもなければ、顔だって覚えてないのに…
と、しつこいくらい念を押す。
俺は岩居から、その女性の写真と、紙を渡された。
確かに美人だった。
瞳はくっきり二重で、まつ毛も長い。
カメラ目線の、うるんだ感じは、可愛いらしい上に、優しい印象を与える。
唇もふっくらしてる、ピンク色。
隣の父親と腕を組み、寄り添う姿は、親しみを覚える。
紙には、彼女の身の上が、簡単に書かれていた。
『佐伯検事正の長女。兄弟姉妹なし。母は、癌で数年前に他界。
歳は、二十四歳』
「一コ下くらいか……」
―え?
心臓の音が、岩居に聞こえたんじゃないかと、不安になった。
それくらい、胸が鳴った。
名前 佐伯 美月。
美月?
この名前は―…
イルカの水槽に吸いついていた少年と、唐突に声をかけてきた少女を思い浮かべた。
まさかな…。こんな偶然。
呆然とする俺の肩を、岩居さんが叩く。
「おい。ぼーっとするな。これから、本物を迎えに行くんだ。手を出すなよ。婚約者も一緒らしいからな」
その痛みは、肩ではなく、胸に響いた。
あの少女と決まったわけでもなければ、顔だって覚えてないのに…