イルカ、恋うた
バカだな。
「出しませんよ!岩居さんこそ、ちゃんと仕事に集中してくださいよ!」
頭を切り替え、二人で署を出た。
一人娘の美月は、出張の父を家から見送り、婚約者の桜井検事と外出した。
桜井検事の方の携帯に連絡を入れると、都内の水族館にいるので、迎えにきてほしいとのこと。
着くと、桜井検事は出口に立っており、彼女はまだ中だと言う。
事件の報告の後、混乱し、迎えに来るまで、一人にしてほしいと、水槽の前に残ったらしい。
一方、桜井検事も尊敬する上司の状況に、目頭を押さえ、うつむいた。
整った顔が、鼻梁まで皺が寄る。
彼も一人になりたい、と言うので、岩居さんと二人で、彼女を迎えに行った。
彼女は水槽の前で、蹲っていた。
怪訝な顔した子どもが、近寄ろうとして、親らしき大人が、手を引いて避けた。
痛々しい光景に、岩居さんと顔を合わせた。
「あの、佐伯美月さんですね?」
岩居さんがゆっくりと顔を上げた彼女を支えて、立たせた。
それでも、身体は震え、彼女は壁に手をついた。
涙声で、岩居さんに問う。
「父はどんな様子ですか?」
意識が戻るかは不明、とは聞いていた。
「出しませんよ!岩居さんこそ、ちゃんと仕事に集中してくださいよ!」
頭を切り替え、二人で署を出た。
一人娘の美月は、出張の父を家から見送り、婚約者の桜井検事と外出した。
桜井検事の方の携帯に連絡を入れると、都内の水族館にいるので、迎えにきてほしいとのこと。
着くと、桜井検事は出口に立っており、彼女はまだ中だと言う。
事件の報告の後、混乱し、迎えに来るまで、一人にしてほしいと、水槽の前に残ったらしい。
一方、桜井検事も尊敬する上司の状況に、目頭を押さえ、うつむいた。
整った顔が、鼻梁まで皺が寄る。
彼も一人になりたい、と言うので、岩居さんと二人で、彼女を迎えに行った。
彼女は水槽の前で、蹲っていた。
怪訝な顔した子どもが、近寄ろうとして、親らしき大人が、手を引いて避けた。
痛々しい光景に、岩居さんと顔を合わせた。
「あの、佐伯美月さんですね?」
岩居さんがゆっくりと顔を上げた彼女を支えて、立たせた。
それでも、身体は震え、彼女は壁に手をついた。
涙声で、岩居さんに問う。
「父はどんな様子ですか?」
意識が戻るかは不明、とは聞いていた。