イルカ、恋うた
岩居さんは口をつぐんだかと思えば、こちらを見て「り、竜介」と振ってきた。
言い辛いことも、当事者にはしっかり伝えろ、って指導したのは、岩居さんだ。
本庁に採用されない理由が分かる気がした。
仕方なく、伝えようと思った。
佐伯美月は涙を溜めた瞳で、こちらを見てくる。
ああ、言いにくい…
ためらっていると、彼女から声を発した。
「りゅ、う……すけ?」
―え?
俺は反応できなかった。
彼女はまた、「竜介」と呼んだ。
俺は聞き流した。
「…佐伯検事正は、大変申し訳にくいんですが、意識不明です。詳しいことは、医師に聞いてください。まだ、希望はあります。取り乱さないでください」
佐伯美月は、壁に置いてた手を、こちらに伸ばしてきた。
が、男性の声で止まった。
「美月!」
桜井検事は駆け寄り、「急ごう」とその手を握った。
岩居と桜井検事の間を歩くようにして、彼女は横を通り過ぎた。
彼女の視線を感じて、顔を背けた。
完全に過ぎると、ため息を吐いた。
一度視線を上げると、目の前の水槽で、イルカが踊るように、舞っていた。
あの水族館じゃないのに―…
言い辛いことも、当事者にはしっかり伝えろ、って指導したのは、岩居さんだ。
本庁に採用されない理由が分かる気がした。
仕方なく、伝えようと思った。
佐伯美月は涙を溜めた瞳で、こちらを見てくる。
ああ、言いにくい…
ためらっていると、彼女から声を発した。
「りゅ、う……すけ?」
―え?
俺は反応できなかった。
彼女はまた、「竜介」と呼んだ。
俺は聞き流した。
「…佐伯検事正は、大変申し訳にくいんですが、意識不明です。詳しいことは、医師に聞いてください。まだ、希望はあります。取り乱さないでください」
佐伯美月は、壁に置いてた手を、こちらに伸ばしてきた。
が、男性の声で止まった。
「美月!」
桜井検事は駆け寄り、「急ごう」とその手を握った。
岩居と桜井検事の間を歩くようにして、彼女は横を通り過ぎた。
彼女の視線を感じて、顔を背けた。
完全に過ぎると、ため息を吐いた。
一度視線を上げると、目の前の水槽で、イルカが踊るように、舞っていた。
あの水族館じゃないのに―…