イルカ、恋うた
「あ、あの。大丈夫です。あなたが信じないでどうするんですか?
たった一人の家族に…お嬢さんに気弱になられても、彼にとって励みになりません。
どうか信じて祈ってあげてください。きっと、大丈夫ですから」
とりあえず、なだめるしかないと思った。
少し落ち着いた美月から、素早く離れた。
でも、彼女はすがるように、凝視してくる。
まだ疑うような目を向けてくる桜井検事。
それぞれの視線から、逃げたい自分。
そこに漂う異様な空気に耐えかねて、俺は足早にロビーの方へ逃げた。
追って来る岩居さんが、「どういうこと?」と何度も訊く。
結局、ロビーを過ぎて、閑散とした庭に出た。
木製のベンチに座ると、思わず頭を抱えた。
そこに岩居さんから、紙コップを渡された。
コーヒーの香りに、わずかに癒された。
「お前等、知り合いだったの?」
「ガキの頃に一度会っただけです。僕は忘れてましたし、彼女もそうだと思いましたが……。
まぁ、大した思い出があるわけじゃないし、人違いだって通します。検事に疑われたくないですし」
俺は苦笑した。
「彼女が納得すればなぁ。なんか、簡単には済まなそうな雰囲気だったぞ」
たった一人の家族に…お嬢さんに気弱になられても、彼にとって励みになりません。
どうか信じて祈ってあげてください。きっと、大丈夫ですから」
とりあえず、なだめるしかないと思った。
少し落ち着いた美月から、素早く離れた。
でも、彼女はすがるように、凝視してくる。
まだ疑うような目を向けてくる桜井検事。
それぞれの視線から、逃げたい自分。
そこに漂う異様な空気に耐えかねて、俺は足早にロビーの方へ逃げた。
追って来る岩居さんが、「どういうこと?」と何度も訊く。
結局、ロビーを過ぎて、閑散とした庭に出た。
木製のベンチに座ると、思わず頭を抱えた。
そこに岩居さんから、紙コップを渡された。
コーヒーの香りに、わずかに癒された。
「お前等、知り合いだったの?」
「ガキの頃に一度会っただけです。僕は忘れてましたし、彼女もそうだと思いましたが……。
まぁ、大した思い出があるわけじゃないし、人違いだって通します。検事に疑われたくないですし」
俺は苦笑した。
「彼女が納得すればなぁ。なんか、簡単には済まなそうな雰囲気だったぞ」