イルカ、恋うた
「ねぇ?……竜介?」


彼女は手を伸ばして、俺の腕を掴んだ。


「あのね、私ね……」


不安げな涙目で、それでもわずかに微笑む。


何を望んでいるのか、さっぱり読めない。


しかし、次の彼女の言動に、どうすべきか決めた。


美月はまた、俺の胸元に顔を埋めた。


「え?」


「やっと、会えた…」

と、彼女は呟いた。


「あの。先ほどから思っていたんですが、誰かとお間違いじゃないですか?
こういう職業だと、よく間違われるんです。どこかで、お世話になった、おまわりさんじゃないですか、とか」


美月の肩を持ち、身体を離させた。


彼女の表情は、一気に陰る。


「じゃあ、どうして私達家族が二人だけって知っているの?さっきの刑事さんと話してたのは?私のことでしょ?」


「違いますよ」と返した後、


「ご婚約、おめでとうございます」


と言った。


祝ってほしいだけなら、これで終わると考えた。


それなら、納得してくれると思った。


「ありがとう」と、幸せそう笑ってくれたら、認めても大丈夫かな、とも考えてた。


が……


美月はうつむき、肩を震わせている。


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