イルカ、恋うた
警視庁も検察庁も一切、無言を決めこんでおり、捜査状況は不明。


俺ですから、知り得なかった。


世間と同じように、過去に受け持った事件の判決が気に入らず、犯人が勝手な怒りをぶつけたんだ、と思ってる。

「ちょっと、過去を調べてみたんだ。で、今回使用されたのは、拳銃だろ?当然、なかなか素人では手に入らないだろ?」


確かにそうだ。


しかも、357マグナム弾。これは、闇のプロじゃなきゃ難しい。


ただこれも、公にされていない。


「過去の事件って?」

と、木田に問う。


「ああ、担当検事以外を狙うとは考えづらかったんで、佐伯氏が検事時代に担当した事件を調べたんだ。それで、一つ気になる事件があった」


「気になる?」


俺は目の前に置かれたコーヒーをすすった。


十三年前、都内の公園で、警官の遺体が発見され、銃が奪われていた、という事件があったらしい。

身内が殺された、と警察は躍起になって捜査した。


「そして、一人の男が逮捕された」


と木田は教えてくれた。


「そいつが今回の?」


「さぁ、だが一番恨んでいそうだ」


彼の目は鋭くなった。
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