イルカ、恋うた
「刑事となったお前には言いづらいが、調書は故意に、いいように作られたんじゃないかと思って。

このヤクザ、一度は首領の指示なんて言ってない、って主張してる。

後にしたその指示だったっていう供述で、結局家宅捜査。麻薬所持売買で逮捕。都合が良すぎる」


馬鹿馬鹿しいと思って、言い返した。


「で、出獄待たず、病死。きっかけって、家宅捜査の条件を作りあげたってか?

それなら、恨まれても当然かもしれないが、そう簡単じゃないだろう。

殺人教唆を口で聞いただけで、裁判所も礼状を出すか?」


木田は肩をすくめた。


「さあな。俺の推測はここまで。ま、調べるよ。今度、当時の弁護士に会うし。そしたら、また連絡するわ。点稼ぎにならないか?」


「ならないね。本庁立てるのが、点かな。でも、まあ、級友はお前だけだし、連絡はくれよ」


やっと、二人で笑いあった。


店の外に出ると、見覚えのある中年男性が、紙袋を幾つか抱えて歩いている。


近くに縦列駐車してある車にも覚えがある。


「岩居さん?」


「刑事か?ありゃ荷物係だな。カミさんとでもいるんじゃない?」


確かに岩居さんは、女性と歩いてくる。
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