イルカ、恋うた
それを合図に、彼女は続きを話そうと口を開いた。


しかし、間もなく、邪魔が入った。


「美月!!」


と、桜井検事が呼びながら、駆けてくる。


そして、俺の肩を押し、美月を引き離した。


「ふざけるな!これは一体どういうことだ?貴様、刑事のくせに、検事の婚約者に手を出すとは……!」


許せん、と叫び、掴みかかろうとしてくる。


とっさのことで、反応できずにいると、美月が間に入り、彼の胸を押した。


「お兄ちゃん、やめてよ!」


「美月!?」


桜井検事は目を見開いた。


彼女は怒るように語った。


一人っ子で、母を亡くして、まだ幼なかった自分を心配した佐伯検事正が、親友の三つ年上の息子を遊び相手として紹介した。


「私達、兄妹として過ごしてきたじゃない。なのに、将来優秀な検事になるから、ってパパが婚約を進めた時、どうして抵抗してくれなかったの?

パパは娘の反論なんか聞いてくれなかった。でも、お兄ちゃんなら止めてくれると思ってたのに……」


「俺は君を愛しているんだ。ずっと、君は応えてくれたのだと…。正式に婚約が決まった後、君は大人しく応じていたじゃないか!」


「違う。いつも優しくしてくれたお兄ちゃんを無下にできなかった。パパが出張から戻ったら、もう一度話し合うつもりだったの。でも、あんなことに…」
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