イルカ、恋うた
課長はたぶん、俺が機嫌を損ねるようなことをしたとは考えただろう。


ただ、美月が原因だとは気付いてない。気付いていたら、逆鱗に触れてたはず。


このまま、岩居さんも黙っていて、事件とてもに、静かにこのことも終わってくれたらいい。


「いや、本当なら、今回の事件も興味あるよ。ただ、本庁の目も怖いし…」


「圧力って、どこでもあるもんだな。ウチはあんまり関係ないけど……だから、取ったもん勝ちってな」




木田と別れ、とある公園へ赴いた。


あの事件とは直接関係ない。


警官殺しの現場の公園と、似たデザインなので、軽い好奇心から寄ってみただけ。


子ども達の無邪気な声と、母親の笑い声が響き、穏やかな光景に何だかホッとした。


事件が起こった時は、目撃者がいなかった。

確か、真夜中だった。

でも、都会の十二時。


酔っ払いくらいはいたんじゃ…


遊び歩いてる若者とか、公園といえばホームレス。


ふと、嫌な考えが浮かんだ。


もし、目撃者がこれらの中にいたとしても、金や圧力で何とか操れそうじゃないか、と。


法の下で戦う者がするには、もっとも嫌悪される行為。


だけど、考えられなくもない。
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