イルカ、恋うた
「刑事さんがそこで安堵するですか?おかしいですね。もしかして、佐伯氏の過去が気になったんですか?」


俺は答えられなかった。すると、彼は言った。


「美月ちゃん、元気ですか?」


飲み込む前の、お茶を吹いた。


両肘を付けて、微笑んでいた弁護士から、「すみません」とハンカチを受け取った。


「実は同じ大学の法学部でした。その頃から、佐伯とはライバルでした。

弁護士と検事として再会した時は、笑っちゃいました。その時、美月ちゃんとも会ったんです。可愛いかったですよ。

この間、ようやく佐伯の見舞いに行けたんです。タッチの差で会えなくて。

挨拶したくて、追いかけたら、君がいたんでやめたんです」


まさか、あのベンチでのシーンは見られてないよな。


そのシーンを回想した途端、不快感が現れる。


口を閉じ、グッと息さえ止めてしまう。


こちらの変化を不思議がることもなく、伊藤さんは微笑んでいる。


「弁護士って、負けたら終わりなんですよ。評価も下がりかねない。ただ、それ以前にプライドってやつかな。

相手がどんな人であれ、勝ちたいじゃないですか。凄腕検事なら、ちょっと腕が鳴ります」

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