イルカ、恋うた
異性にこんな風に接されるのは、初めてなのだ。


血がのぼって、恥ずかしがってる俺に構わず、彼女は続けた。


「あ、でも。期間限定らしいわ」


「限定?」


「うん。守ってくれて、逆に大切にしたいって思えるような、素敵な人と出会うまでだって」


「ふーん…」


どういう意味だろう?
君は分かる?と問おうとしたら…


「ねぇ、絵を描かない?私、スケッチブックを持っているの」


こちらの返事なんか待たず、手提げ鞄からスケッチブックを出してきた。


「絵って……イルカ?」


「うん。男の子と女の子のイルカの前で出会ったんだもん。記念になるわ」


やっぱり、男女って決めつけるんだ。


意味はよく分かんないし…


こちらの困惑も構わず、彼女は床に、色鉛筆やペンも出した。


「私はこっちに描くから、あなたはこっちよ」


と、一ページ分を広げ、それの真ん中に、鉛筆で薄く線を引いた。


どうしようか、ただ立ち尽くしていたら、美月に腕を引かれた。


半ば強引に、横に座らさせた。


別の場所で、小学生の集団が写生をしていたから、違和感はなかった。

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