イルカ、恋うた
意外な指摘に、「え?」と聞き直した。


「見た目ともかく、内心かなり動揺してんだろ?彼女に会うの、不安か?」


「そんなことありません」


自分でも不思議なくらいな、冷たい声色で、やつ当たりだと思った。

「すみません……でも、本当に大丈夫ですから。普通に仕事しましょ」


そして、佐伯宅に着くと、門の前で既に彼女は立っていた。


初秋とはいえ、今日は比較的肌寒いと思うんだけど…


制服警官に敬礼し、彼女を連れていく。


ちなみに、不審物を仕掛けられたり、置かれないよう、彼らは留守でも警備は続ける。


美月を後ろに乗せた後、岩居さんが突然、上着を脱ぎ、俺が座るはずの助手席に置いた。


「え?ちょっと、踏みますよ」


「暑いから脱ぐ。でも、踏むな」


「はい?」


「後ろに行け。邪魔だ」


邪魔って……


俺達、コンビでしょ?


不満だったけど、置いて行くぞ、と脅され、渋々後部座席に座る。


ドアを開けた時、先に運転席側に座ってた美月と目が合って、「失礼します」と会釈して、隣に座った。


「お嬢さん。青山だっけ?」


岩居さんと問いかけに、彼女は「はい」と言った。


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