イルカ、恋うた
その時だ。


きゃあ、と女性の悲鳴が聞こえた。


俺達はすぐに車を降りた。


岩居さんが、「お前達はここを頼む」と門の前の警官に言う。


気が付いたら、そんな岩居さんよりも先に走ってた。


初めて、入った佐伯宅。


だけど、迷わなかった。


玄関に入っても、彼女の悲鳴が続いてた。


廊下を駆けていくと、その声のする半開きになってた、ドアに突っ込んでた。


――え?


俺は唖然と、固まってしまった。


あの桜井検事が、彼女に馬乗りになってる。


「……り、りゅう…すけぇ…」


手をこちらへ向ける。


「また、お前か」


桜井検事は真っ直ぐ、向かってきて、俺の胸ぐらを掴む。


「おやめください!」と、岩居さんがその手を押さえる。


「なんで、コイツがここにいる!」


叫んだ瞬間、アルコールに臭いが鼻をついた。


「なんでいるんだよ!?」


そう叫びながら、彼は急に手を離した。


気が付いたら、俺は真っ直ぐ、その間を抜け、美月の傍に行ってた。


彼女は胸元を押さえてる。


服がそこから裂けてる。


破かれたんだ。


俺はスーツの上着を脱ぎ、美月にかけた。


すると、彼女はそのまま胸に飛び込んできた。


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