イルカ、恋うた
「俺の女に触るな!!」


あの冷静沈着な検事が、完全に自分を見失ってる。


こちらへ、再び腕を伸ばそうとした彼を、岩居さんが押さえる。


そして、


「あなたは検事ですよ!正義の側に立つ人間でしょう!!」


そう岩居刑事に言われ、彼はハッとしたように、止まった。


「こんな、女性を傷つけるような真似を……」


すると、彼の怒りは再び俺に向かう。


「外したはずのコイツがなぜいるんだ!?」


岩居刑事は、また暴れ出しそうな彼を自分の方を向けた。


「彼を戻したのは、佐伯検事正です!」


「え?」



美月も腕の中で、そう反応した。


「何だって?」


桜井検事は、信じられないという風に、岩居さんや俺、美月と視線を流し……


不意に、岩居さんを押しのけると、小走りに去っていく。


「ちょっと、気になるから送っていく。ここ頼むぞ」


と、俺に言い残し、彼は後を追った。


二人きりになると、彼女は呟いた。


「おかしいよ……」


「え?」


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