イルカ、恋うた
「……分かってるもん。お兄ちゃんの気持ち。好きな人が見てくれない辛さ。私が一番、分かってるもん!」


そう声をあらげた後、彼女は一拍置いて、続ける。


「だからこそ、ダメだよ……。好きじゃないのに、同情だけで、傷の舐め合いだけで、結婚するなんて……」


「だけど、桜井検事は君を本気で……」


愛しているんだよ、ともう一度説得するつもりが……


「竜介、あの日…あの病院で……お兄ちゃ…桜井検事と対立した時、一瞬は私を奪おうとしてくれたんだよね。嘘だったの?」


先ほどの、岩居さんの言葉を思い出した。


『交番勤務に逆戻りかもねぇ』


その方がよかったのかもしれない。


いや、刑事さえならなければ、ずっと交番勤務してれば、出会わずに済んだのに…


「俺、課長に頼んで、外してもらう。間違いだったんだ。

どういう意図で、検事正が戻したかは知らないけど。こうなった以上は、桜井検事の為にも、やめた方がいい」


すかさず、美月は反論した。


「いやッ。そしたら、会えないんでしょ!?もし、外れても、仕事とは別に会ってくれるの!?」


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