イルカ、恋うた

彼の涙

翌日のこと。

しばらくの間、俺は再び外れてほしいと、要請があった。


また、昨日のことが原因だと思ったが、実は美月自身が、岩居さんを通して、頼んだことで、本当に数日間だけだった。


後に、その間に、結納があったことを知った。


そして、また担当に戻った直後、美月から来てほしいと言われ、岩居さんと二人で、佐伯宅に向かった。


すると、俺と二人で話したいと言い、岩居さんだけ客間に残った。


俺はまた、彼女の部屋に通された。


以前なら、こんなこと拒否してた。


だけど、結婚の報告をしたいのだ。祝ってほしいんだ、と判断して従った。


桜井検事と幸せになるよう言ったのは、自分だ。


だから、平気。


元々、そんな仲ではないのだから、と自分に言い聞かせた。


敷かれてたカーペットの上に、トレンチに乗せたティーセットを真ん中に、向かいあって座った。


「あのね。この間はありがとう」


カップに紅茶を注ぎながら、彼女は言った。


「いや。ちゃんと、休めた?」


「うん、もう平気」


その微笑みを見て、ホッとした。


そうだ。


おめでとうって言わないと……。


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