イルカ、恋うた
改めて、友達として……。

「あの……」


「はい」と、ティーカップを渡され、言い損ねる。


「あ、ありがとう」


その紅茶を口に含んだ時、今度は美月から話す。


「竜介のお話聞きたくて……」


唐突なことに、紅茶を吐きそうになる。


それを飲み込むと、聞き返した。


「話?」


「うん。この間ね、私眠くなっちゃって、結局寝たでしょ?本当はもっと、お話したかったの」


って、言われてもな。


“俺の話”って、一体どうすれば……?


困っていると、美月も何だか困惑ぎみに言う。


「き、聞きたいの。この間、言ってた。義理のお父さんやお母さんのこと、感謝してるけど、その……逆恨みしてる……とか。

それに、お父さんのこととか聞きたいの。ごめんなさい。酷いこと言ってるかもしれない……だけど、どうしても……」


不思議と不快ではなかった。


「でも、どうして?」


「竜介のこと知りたいの……」


その理由こそ、知りたいと思った。


だけど、駄目だ。


結婚前の、結納を済ませた女性が、そう言うのは、きっと最後に、友達として聞きたいからだ。
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