イルカ、恋うた
数分後、落ち着いてくると、急激に恥ずかしくなった。


「ご、ごめん……なんか……」


謝っておいて、まだ彼女に抱きついていた。


「うわぁ、本当にごめん!」


彼女の背中にまわしてた、自分の腕を外し、後方へ下がった。


尻餅をついたような状態の俺に、美月は突然、「立って」と言い出した。


「え?」


「早く」


「うん……?」


俺はゆっくり立ち上がった。


すると、今度は彼女が抱きついてきた。


「美月?」


「交代」と、彼女は笑った。


「竜介、あったかい」


無邪気な顔を、胸に埋めてくる。


――ダメだ。何も意識してはいけないんだ。

していいのは、『友達ということ』と『彼女は他の男性と結婚するという現実』


「美月」と、呼びかけると、「何?」と顔を上げた。


「おめでとう。幸せになるんだよ」


「え?」


美月は真顔になった。


俺は構わず、その頬に手を置き、また言った。


「ありがとう。お前には、幸せになってほしいと願ってる。結婚、おめでとう」


「竜介……」


「あ、岩居さん。待たせてる。早く、行かなきゃ」


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