イルカ、恋うた
「子どもながらというか、子どもだったからこそか、再会できると信じてたらしい。
だから、絵を交換したそうだ。

母親が死んだ時も、その絵を見て、少年を思い出して、強く生きることを誓った、と。

それを、桜井検事にも話したらしいよ」


そして、彼は動揺しながらも、「幸せを祈る」と、呟くように言い残したそうだ。


桜井検事のことも気になっていたけど、一つ訊きたかった。


「……あの、そのイルカって、一つに戻った時って……」


岩居さんは「はあ?」と言った。


どうやら、そこまでは聞いてないらしい。


一人になった美月は、電話で岩居さんを呼び、足のすっかり痺れた彼女を、彼が車まで支えたという。


「……お前を外した理由は、婚約破棄を止められるのが、怖かったからだそうだよ」


「……怖い?」


岩居さんは、苦笑した。


「女心が分からん奴だなぁ。止められることじゃなくて、止めてくるお前が怖いんだよ」


余計に分からなくなった。


首を傾げていると、岩居さんは今度は呆れる。


「だから、結婚を止めてほしいのに、止めないどころか、勧める好きな男と会うのが、怖いんだよ」



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