イルカ、恋うた
おめでとう、と言った時、泣きそうな顔をした美月を、思い浮かべた。


婚約破棄……


なんてことを……


嬉しくない?


いや、喜んでる自分がいる……


確実に不幸にしてしまった人がいるのに……


俺だって、正義の側に立つ人間なのに―…


「……お前、どうすんだ?」


岩居さんの問いに、ただ俺は、「別に、どうもしません」と答えた。


「ああそう。お嬢さんは、自分に正直なのになぁ」


彼のそのぼやきを、聞き流すことにした。


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