イルカ、恋うた
《5》

公園

佐伯検事正の襲撃事件があったとは思えないくらい、平穏だった。


もちろん、他の事件は何件も発生するが、けの事件に関与しそうな異変は起きていない。


つまり、いい意味でも、悪い意味でも、犯人は沈黙していると、言うことだ。


先日、ショックで口の利けなかった運転手が、ついに証言した。


しかし、解決に至るようなものではなく、バイクの音がしていたが、すぐに蹲ったため、ほとんど見えなかった。


垣間見えたのは、ヘルメットだった、と。


他にも手がかりがないのか、苛立った本庁の刑事と、度々すれ違った。


所轄の者は、そんな姿をそっと嘲笑していた。


「迷宮入りじゃないよなぁ。検事正の意識が戻ったことは、あえて公表しなかったみたいだが……。新たな襲撃を恐れたのと、泳がすつもりなんだろうか」


岩居さんが、ふとそんなことを漏らした。


確かに、理解できない。


ネズミ捕り方式で、再度撃ちに来る犯人を待ち構えてもいいんじゃないか、と思う。


もちろん、検事正をオトリにするんじゃなく、安全な位置に部屋を用意して、そこにいると嘘の情報を流す。


って、特別室は世間には知られていないし、利用する著名人を守るため、公にはできない。


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