イルカ、恋うた

水の中

駅に戻り、来るという彼を待ってた。


車が前で止まり、岩居さんが「早く来い」という。


何だか、嫌な予感がして近づくと、後部座席に彼女が乗ってた。


佐伯検事正が、面会拒絶にしたため、今日は外出の予定がないと聞いていたため、岩居さんだけがついてた。


わざわざ、俺を呼ぶと言うことは、何か用事ができたのか、と思ってた。


「交代ね」


彼の言葉に、「へ?」と返す。


「お嬢さんが落ち込んでる上に、お前に会いたいっていうんだもん。俺としては、申し訳ないじゃん。だから、交代」


自分は電車で、署に帰るという。


「このこと、課長には?」


「大丈夫。俺の体調不良とか適当に言っておくし、身辺警護じゃん。それに、あの人本庁の顔をしか窺ってないから」


婚約破棄を知った後、なんだか気まずい。


何がなんでも、断りたかった。


だけど……


「それにさ。この間、せっかくお前と二人きりになれたのに、監視されているようで嫌だったって。

ほら、青山で。防犯カメラの前にいろって言っただろ?

あれ。とりあえず、犯人は沈黙してるし、彼女もゆっくりさせてあげたいじゃん……」



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