マツモト先生のこと―離島で先生になりました―
4月1日
初出勤! 気合い、入っちゃう。
アラームが鳴った瞬間に、スパッと気持ちよく目が覚めた。自分のためにロイヤルミルクティーを作って、お気に入りのカップで飲んだりして。うん、一日の滑り出しは快調。春らしいクリーム色のワンピースで、いざ教員生活デビュー!
職員室の隣の席はマツモト先生だった。あたしだって早めに出勤したのに、マツモト先生のほうはもっと早く着いてた。いかにも仕事中っていうマジメな様子で、書類をにらんでいる。
改めて見ると、いかついっていうか寡黙っていうか。ちょっと近寄りにくい雰囲気をかもし出す人だ。小学校の先生のくせに。
まあ、悪い人じゃないのは間違いない。昨日の恩もあるし。あたしは精いっぱい愛想たっぷりに明るく挨拶した。
「おはようございます。昨日は、どうもありがとうございました」
マツモト先生は指導要録からチラッと顔を上げて、もそもそと挨拶した。なんか拍子抜け。せっかく特上スマイルを作ってあげたってのに。この人、シャイなのかな?
まあ、別に、いいか。
あたしは重たいカバンを置いて机に向かい、記念すべき教員生活最初の仕事に取りかかった。
このマツモト先生って人はシャイなんじゃなくて無神経なだけだ! と、あたしが理解したのは、それからほぼ一時間後。
あたしはデスクに向かっていた。児童数五人の四年生を担任することになったんだけど、イナカとはいえ現代っ子の名前は読みにくい。名簿にふりがなを付けていたら、手元に、隣からのぞき込んでくる視線を感じた。マツモト先生が、こっちを見ている。
「何ですか?」
あたしは小首をかしげてみせた。マツモト先生は、ぼそっと一言。
「ペンの持ち方、おかしかですね」
……ぷっつん。
余計なお世話ですっ! って、あとちょっとで口から出そうだった。ペンの持ち方がおかしいことくらい、昔っから、わかってるのよ、自分でも。というか、アナタ何さまですか? ムカつく。
あたし、この人、やだ!
アラームが鳴った瞬間に、スパッと気持ちよく目が覚めた。自分のためにロイヤルミルクティーを作って、お気に入りのカップで飲んだりして。うん、一日の滑り出しは快調。春らしいクリーム色のワンピースで、いざ教員生活デビュー!
職員室の隣の席はマツモト先生だった。あたしだって早めに出勤したのに、マツモト先生のほうはもっと早く着いてた。いかにも仕事中っていうマジメな様子で、書類をにらんでいる。
改めて見ると、いかついっていうか寡黙っていうか。ちょっと近寄りにくい雰囲気をかもし出す人だ。小学校の先生のくせに。
まあ、悪い人じゃないのは間違いない。昨日の恩もあるし。あたしは精いっぱい愛想たっぷりに明るく挨拶した。
「おはようございます。昨日は、どうもありがとうございました」
マツモト先生は指導要録からチラッと顔を上げて、もそもそと挨拶した。なんか拍子抜け。せっかく特上スマイルを作ってあげたってのに。この人、シャイなのかな?
まあ、別に、いいか。
あたしは重たいカバンを置いて机に向かい、記念すべき教員生活最初の仕事に取りかかった。
このマツモト先生って人はシャイなんじゃなくて無神経なだけだ! と、あたしが理解したのは、それからほぼ一時間後。
あたしはデスクに向かっていた。児童数五人の四年生を担任することになったんだけど、イナカとはいえ現代っ子の名前は読みにくい。名簿にふりがなを付けていたら、手元に、隣からのぞき込んでくる視線を感じた。マツモト先生が、こっちを見ている。
「何ですか?」
あたしは小首をかしげてみせた。マツモト先生は、ぼそっと一言。
「ペンの持ち方、おかしかですね」
……ぷっつん。
余計なお世話ですっ! って、あとちょっとで口から出そうだった。ペンの持ち方がおかしいことくらい、昔っから、わかってるのよ、自分でも。というか、アナタ何さまですか? ムカつく。
あたし、この人、やだ!