恋のメロディー
きっと好きな人ができたんだ…。
その事実を受け入れるのにそんなに時間は要さなかった。でもどういう気持ちで先輩の歌を聴けばいいのか分からずに私は先輩の歌を知る前までの日常に戻っていた。
でも、ただひとつだけ違ったことがあった。
よく聴いていた好きな曲を聴いても何も感じなくなっていた。そればかりか先輩の歌が聴きたいという思いが大きくなるだけ。
先輩の声が好きで、先輩の作った歌が好きで、先輩が奏でる音も好きで、先輩のことが大好きなんだ。
観念した私は先輩の歌を聴きに行った。
いつもの定位置には立たず、先輩たちを遠目に見ながら耳をすませた。
落ち着く…。なのに視界がぼやけて仕方がない。はぁ…まだ先輩の歌を普通に聴けないなぁ……。
一曲終わり数秒の間が空いて、いつもなら先輩の「ありがとうございますー!」が聞こえるはずなのにいくら待てども聞こえない。
何かトラブル?と目を向けると先輩がギターを置いてこっちへ向かってくる。