溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~【番外編】
出張の後は

執務室で資料の作成をしていると、デスクの上の電話が鳴った。

「はい。専務室でございます」

「菜々子さん? 今、東京駅に着いたから」

待ち焦がれていた知らせを聞き、心が躍る。

「わかりました」

「じゃあ、後で」

「はい」

広海さんとの通話が終わり、受話器を置いた。

ようやく拓海さんに会える!

イスから勢いよく立ち上がって小走りすると、ドアノブに手をかけた。けれど、その冷たい感触でハッと我に返る。

東京駅からフジオカ商事の本社まで、タクシーで十五分はかかるはずだ。

いくらなんでも出迎えに行くのは早すぎる。あと十分経ったら一階に降りよう。

そう決めるとデスクに戻り、途中だった仕事に取りかかった。でもソワソワして落ち着かない。

もう十分経った?

執務室の壁かけ時計を見ても、たった三分しか経ってなかった。

拓海さんと広海さんが出張に行ったのは、四日前のこと。

九州と大阪、名古屋の各支店を訪れ、会議に出席。そして取引先に出向き、会食をこなすスケジュールは過密で大変だったはずだ。

本社に戻り、社長に出張の報告を終えたら今日の業務は終了だ。

今晩はゆっくり休んでもらおう……。

拓海さんが帰ってくるのを待ち切れなくなって、連絡があってからまだ五分しか経っていないのに、専務室を飛び出した。

< 1 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop