溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~【番外編】
出張の後は
執務室で資料の作成をしていると、デスクの上の電話が鳴った。
「はい。専務室でございます」
「菜々子さん? 今、東京駅に着いたから」
待ち焦がれていた知らせを聞き、心が躍る。
「わかりました」
「じゃあ、後で」
「はい」
広海さんとの通話が終わり、受話器を置いた。
ようやく拓海さんに会える!
イスから勢いよく立ち上がって小走りすると、ドアノブに手をかけた。けれど、その冷たい感触でハッと我に返る。
東京駅からフジオカ商事の本社まで、タクシーで十五分はかかるはずだ。
いくらなんでも出迎えに行くのは早すぎる。あと十分経ったら一階に降りよう。
そう決めるとデスクに戻り、途中だった仕事に取りかかった。でもソワソワして落ち着かない。
もう十分経った?
執務室の壁かけ時計を見ても、たった三分しか経ってなかった。
拓海さんと広海さんが出張に行ったのは、四日前のこと。
九州と大阪、名古屋の各支店を訪れ、会議に出席。そして取引先に出向き、会食をこなすスケジュールは過密で大変だったはずだ。
本社に戻り、社長に出張の報告を終えたら今日の業務は終了だ。
今晩はゆっくり休んでもらおう……。
拓海さんが帰ってくるのを待ち切れなくなって、連絡があってからまだ五分しか経っていないのに、専務室を飛び出した。
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