俺のこと好きでしょ?-六花の恋-【完】

遠江さんを送り届けて、僕と由羽の帰る道が分かれるまでの間に切りだした。

「あのさ由羽。水都ってなんであんなに家の決めた人と結婚する、とか意固地になってんの? 巽さんも琴さんも、そういうこと強いるようには思えないんだけど……」

僕の――僕らの疑問。

玲を好きでいながら、結婚は決まったものに臨むと言う水都。

両親である巽さんと琴さんは優しい人たちで、いくら藤沢が名家だからって娘にそういうことを押し付けるような人には思えないんだ……。

「あー、お前は知らなかったか……」

由羽が声を小さく答えた。

僕は由羽の方を向く。

「なにを?」

由羽は立ち止まり軽く空を仰いで少し黙ったあと、意を決したように真っすぐ前を向いた。

「……水都は養子なんだ」

…………。

頭の中で、ポクポクポク、チーンと何かを数える音が鳴った気がした。

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