俺のこと好きでしょ?-六花の恋-【完】

僕はちらとも知らなった事実。

「俺は……水都を引き取ってすぐの頃に巽さんと琴さんがうちに来て言われたんだ。「由羽はお兄ちゃんだから、この子のお兄ちゃんにもなってね」って。そんとき巽さんと琴さんの子ではないんだな、って子供心になんとなくわかった。……玲はわからん。知ってて知らないフリしてたのか、本当に知らなかったのか……反応が読めない」

「だよな……」

今日接してきた僕の感覚としては……玲は知っているんじゃないかと思う。

水都の事情がどうの、とか言っていたし。

あと、と由羽が言った。

「羽咲は知らない」

「うーが?」

知らないって……あんなに仲良しで一緒にいるのに?

「水都がその話を自分からしたの聞いたことないし、羽咲の素振り見てても知ってる感じはしない。藪蛇になるから、俺から羽咲に訊いたこともないし」

「そっか……」

「だからまあ……水都から聞く日までは、知らなかったってことで」

「うん……」

そうだよな。こういうの、由羽から聞くのは反則だったと反省する。

水都が自分から話すのを待つべきだったんだろう、と。

けれど僕は知ってしまったから。

この話を聞いて水都への態度を変えたり、変わったりはしないだろうけど……うん。

< 355 / 369 >

この作品をシェア

pagetop