俺のこと好きでしょ?-六花の恋-【完】
その姿に、少し安心してしまうところがあった。
菜原さんもほっとしたように表情をやわらかくする。
「覚えててくれたんだ! 久しぶり、司さん!」
「覚えてるよー! 同じ高校だったんだねっ」
菜原彩加さん。
空手の県大会で顔を合わせたことがある子だ。
菜原さんは胸に手を当てて、大きく息を吸った。
「よかったーっ。知ってる子、全然いなくて緊張してたんだ。司さんが新代にいたからびっくりしちゃった」
「私も知ってる人いなくて……。話しかけてくれてありがとう。あと、羽咲でいいよ?」
「ほんとっ? あたしも彩加でいいよっ」
「さ、彩加ちゃん……?」
「呼び捨てでもいいよ?」
「呼び捨て⁉ それはちょっと慣れてなくて……」
水都ちゃんのことも、ずっと水都ちゃんだったから……。
妹ですら呼び捨てなんて出来ないんですよ……。
「そう? じゃああたしは羽咲でいい?」
「もちろんっ」
「あとさ、クラス中……って言うか、学校中が気になってることだと思うんだけど……」