雨の日はそばにいて抱きしめて

愛しい君へ





なぁ、覚えてるか?




初めて会った日

恋は

キラキラした瞳を俺じゃない桜の木へ向けていた


携帯を縦に横にと動かしながら夢中になって写真を撮る姿を

もっと間近で見たかった


もちろん

携帯の角度から俺の写真を撮っていないことは分かっていた

それでも

近づく理由が欲しかった


今時珍しく簡易ロックしかされていない携帯は

待ち受けが綺麗な向日葵で
俺とは違う真っ直ぐな奴だと思った


・・・欲しい


きっと一目惚れだった


俺を知らないことも
俺にとっては新鮮で

見た目で人を判断しない
良い女だと思った


そこからの俺の行動は
ダチには聞かれたくない程必死で

表向きクールなフリで
中身は一生懸命だった


勝手に登録した番号とアドレス


『電話・・・出ろよ
じゃあな、恋』


強引に交換したけれど
受けてくれるかどうかは
賭けみたいなもんだった

ヒラヒラ手を振って恋に背を向けたけれど

出るまで何度だって電話するつもりだったし

なんなら

S女の正門前で待ち伏せしてやるって

思っていた


少しでも良いから興味を持って欲しい

あの日から俺の胸の中は
ずっと恋で埋まっている




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