雨の日はそばにいて抱きしめて


・・・・・・行かないで


私に背を向けた宙は
一度も振り返らなかった






・・・





あの日、持っていた傘をどこで手放したのか

ずぶ濡れで家に帰った私は
三日間熱を出した

防水仕様じゃなかった携帯は
真っ暗なまま動かなくて


全てを吹っ切るように解約した


・・・・・・全部忘れよう


毎日毎日鳴らない携帯を握りしめていた自分を

解放してあげよう









熱が下がって学校へ復帰してからも

小波は何も言わなかった


ただ


病的に携帯を見ていた私が
携帯を解約したことと

俯くのをやめたことで

全てを察してくれたみたい


宙と出会ってからの数ヶ月を
無かったことにする


携帯が壊れたことで
二人の思い出も消える

写真も通話記録もメッセージも

そして

私の記憶からも

そのうち消えるだろうと

簡単に考えていた



それを



させなかったのは

他ならぬ宙だった









・・・・・・なんで




過去にしようとする私の
記憶を呼び覚ますように現れる宙


毎回違う女の子を連れて


私の前を態と歩いて背を向ける



「なんなのアレ」



その度に小波が私に気を使うことの方が辛くて

なんでもないよと笑って見せた


上手に笑えているかどうかなんてどうでもよくて

頑張って笑う・・・そう

宙とバッタリ出会うたび

私は頑張って笑うようにした









神様・・・

私、何かしましたか?










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