雨の日はそばにいて抱きしめて
気がつけば季節は移り変わり
街はクリスマスカラーで溢れていた
私は・・・去年と同じ
両親と三つ下の弟、想《そう》へプレゼントを買った
「恋、早く!」
「あ、うん」
小波も私も大学はそのまま持ち上がりで
簡単な進級試験を受けるだけだったのに
来季から情報学部が新設されることになり
少し狭き門になるという噂が流れて
小波と二人で冬季講座を申し込んだ
「あたし達にクリスマスはないな〜」
進学塾の個室で
国立大学へ通う大学生の先生を挟んで
小波と二対一の授業を受ける
教えてもらう・・・という形ではなくて
分からない時に解説を求めるスタイルらしく
私たち二人にはちょうど良い空間だった
たまに出す小波の自虐ネタに
ガリ勉タイプの細川先生は
一回も笑ったことがない
そうなると俄然燃えるタイプの小波は
今日も今日とて
クリスマスをネタに
呟きを連発していた
そんな些細な毎日が
私の寂しかった胸の中を埋めてくれて
漸く笑えるようになったと
思っていたのに・・・
・・・・・・なんで
お前なんて底無し沼にでも沈んでろと
本気で思われているのか
塾からの帰り道
駅前の大型クリスマスツリーの下に宙が居た
私がここを通ることを知っていて
私と目が合うのを待っていたかのように
少しこちらを向いて笑った宙は
連れていた女の子の腰に手を回して引き寄せると顔を近づけた
・・・見たくないっ
ギュッと目蓋を閉じる
「・・・なにあれ」
「どういうつもりっ」
小波の声が途切れ途切れにしか耳に入ってこない
そして
全ての音が聞こえなくなった
「レンっ」