雨の日はそばにいて抱きしめて
「・・・フッ」
馬鹿みたいだ
こんなの・・・
宙の思惑通りに
私はこの8年間宙に囚われたままで
一歩も前に進めなかった
やっと夏の終わりに出来た彼
麻人にも結局最後まで心を開くことなんて
出来なかった
それも
全て宙の手の内だったってこと?
自嘲する私に近付くと
「ごめんな」
頭を撫でた
パーティー用にセットした髪が
ゆるゆると崩される
「6年居たメキシコでも
2年篭ったタイの山奥でも
恋のことを想ってたし
この写真だけが俺の支えだった」
そう言って財布を取り出すと
中からボロボロになった写真が一枚出てきた
「・・・っ」
それは・・・
初めて宙に抱かれた日
ベッドの中で撮ったキス写真だった
携帯の中だけに収められたそれが
プリントされていることに驚く
金髪の宙とストレートの髪の私
目を閉じた二人の横顔は
穏やかで幸せそう
『死ぬまで大事にする』
あの日そう言って口付けた宙の声が聞こえた気がして視線を向けると
「恋」
同じ優しい声がして
なんだか無性に泣きたくなった
本当はもっと文句を言ってやりたい
もっと感情を打つけたいのに
宙の想いが私を包んで邪魔をする
違う・・・
囚われたままの私の気持ちが
宙に会えたことで解放された
「辛い想いさせてごめん」
溢れる涙を掬う宙の指が
頬に触れる
その熱に引き込まれるように
椅子に座る私に合わせて
跪いた宙の肩にオデコをつけた